震災から1年の3月11日に、3度めのオープン
極上の音楽とコーヒーを楽しめるジャズ喫茶「h.イマジン」

三陸道大船渡IC入り口近くのショップの一角に、2012年3月11日、震災から1年後のその日にオープンする「h.イマジン」。今回はオープン直前に取材に訪れることができたので、その様子をご紹介していこう。

h.イマジン

この店は敢えてジャンル分けすれば「カフェ」になるだろうが、普通のカフェの感覚で訪れると少し面食らう。店内に入るとまず、巨大なスピーカーとアンプが 鎮座し、壁沿いには数千枚にも及ぶレコードのジャケットが並ぶ。スピーカーから流れるのは、往年の名手がプレイするジャズのスタンダードナンバー。LPレコードならではのバチバチというノイズが、極上のオーディオセットの魅力を引き出している。

h.イマジン

ジャズファン、オーディオファンを魅了するこの店を営んでいるのは、すでに御歳70歳になる冨山氏。名門ホテルのホテルマンとして勤め上げた後、定年を迎え、第二の人生の道筋を考えた時、思い浮かんだのは俗世や今までの“しがらみ”から徹底的に距離を置いた、別の場所での人生だった。移住の地の条件は、大音量で好きなジャズを聴けて、人家がまばらで、雪が少ない場所。最初に選んだのは碁石海岸にあったログハウスだった。東京でコレクションしていたレコードを持ち込み、地元の人々が隠れ家のように使える、秘密めいたジャズ喫茶を始めたという。

h.イマジン
田舎暮らしを特集した全国誌などにも登場する有名店だったが、その店とレコードは、6年後に火災により失われた。命だけは長らえた冨山氏は、ふたたび理想のジャズ喫茶作りに邁進した。隣町の陸前高田市にあった旧役場庁舎を買い上げ、大規模な改装を施して開店。 以前よりも規模も大きく、緑と赤を基調にしたモダンな雰囲気が大いに話題となり、今度こそは軌道に乗るかと思われた。しかし、開業からわずか2ヶ月で、今度は津波に呑まれてしまった。2度の悪夢を体験し、現在は仮設住宅に暮らす冨山氏だが、その表情に絶望は無い。「なるようにしかならない」それが冨山氏の考えだ。3度目の開店に 呆れる友人もいるそうだが、好きなことをして気ままに生きているという自分の姿が、冨山氏にとっては一番の幸せであり活力の源なのである。

h.イマジン
震災後には全国各地のジャズファンやオーディオファン、知人のジャズ喫茶やプレーヤーなどから多くの寄付が寄せられ、店内にはあっという間に 5000枚にも及ぶレコードが揃った。オーディオも東京のオーディオ会社「ヒビノ」から提供されたもので、東京からトラックで運び入れてくれたものだという。「人の温かさが有難い」という冨山氏だが、その人柄の素晴らしさがあるからこそ、多くの善意を呼び寄せているのだろう。

h.イマジン
テーブルにはコーヒー豆の産地をイメージした国旗が飾られており、カウンターにも美しいデザインのスタンドが配されている。この独特なセンスも他の流行のカフェには無いもので、仮に東京都心にこの店があったとしても話題となりそうだ。それが大船渡の国道沿いにあるのだから凄い。

冨山氏が求めるのは、商業ベースに乗った“儲かるカフェ”ではない。一日の多くの時間を過ごす場所を自分好みに仕立て、その“趣味の空間”を開放することだ。あくまでも自分の幸せが上位にあり、幸せをおすそ分けするというスタイルである。訪れる人も、友人の家に訪れる感覚で、気軽に寄ることになるのだろう。

h.イマジン

この店にはメニューが少ない。コーヒーと紅茶、少しのお酒、そして日替わりのパスタ程度ということだ。気まぐれな冨山氏のことなので、開店後もいろいろと変わってゆくに違いない。ただはっきり決まっているのは、コーヒーを自家焙煎し、注文ごとにハンドドリップして提供するということ。それも最高級と言われるブルーマウンテンとハワイコナの生豆を中心に仕入れ、焙煎したばかりの豆で提供するそうだ。ブルーマウンテン、コナともストレートは1,000円となるそうだが、至極の一杯となることだろう。他の銘柄とのブレンドも用意し、こちらは600円で提供。気軽に訪れる際にはブレンドもお薦めだ。雰囲気の良さ、極上のジャズと最高級のオーディオセット。これだけでも十分に魅力的なのだが、一番の魅力は、マスターとの会話の楽しさだろう。

h.イマジン

これまでの説明だと男性客が多いと思われるかもしれないが、訪れるお客さんの大半は女性。冨山氏のウィットに富んだ会話の中には随所に含蓄ある言葉が含まれ、話していると人柄に惹きこまれてしまう。同年代以外の若い人にも屈託なく話しかけてくれ、良き人生のアドバイザーとなってくれるはすだ。自身を「私は よそ者だから」と謙遜する冨山氏だが、2度転んでも3度目に挑むその力強さは、震災から復興に進む三陸の人々にも大きな励みとなっているに違いない。

※大船渡の「h.イマジン」は2013年9月に一旦閉店いたしました。マスターは2014年3月11日に、元のジャズ喫茶があった跡地に、バンガローイン「レインボーサライ」をオープン。

h.イマジン

所在地:岩手県大船渡市立根町岩脇4-6 LOVOA内

電話番号:090-3527-0700

営業時間:10:00~21:00
定休日:不定休

http://love.ap.teacup.com/himagine/

このページをご覧の方はこんなページもご覧になっています。

PAGE TOP

岩手県

大槌町

「ひょっこりひょうたん島」のある町

岩手県の南北のほぼ真ん中、太平洋に面する大槌町(おおつちちょう)。大槌湾へと注ぐ大槌川と小鎚川の河口にあり、2つの川が形成する平野の部分が町の中心となっている。人口は約1万2千人で、その多くが町の中心である海沿いに集まっている…

岩手県

釜石市

鉄とラグビーの街・釜石

釜石市は、太平洋に面する陸中海岸国立公園のほぼ中央に位置し、総面積は441.42平方キロメートル、人口約3万7千人(2012年6月1日現在)の街だ。陸中海岸国立公園は岩手県北部から宮城県北部までの海岸線一帯を占める国立公園で…

岩手県

大船渡市

美しい海岸線と
海の幸を楽しめる街・大船渡

大船渡市は岩手県の沿岸南部に位置し、人口約は4万人。海に山にと、自然豊かで風光明媚な景観をもつ街だ。沿岸部一帯はリアス式海岸となっていて、6キロにも及ぶ海岸線をもつ碁石海岸はとても神秘的…

福島県

相馬市・南相馬市

一千有余年の歴史を経て、
今なおいきづく伝統の祭り

かつて、平将門(~940年)が下総国に野馬を放し、敵兵に見立てて軍事訓練をしたのが起源といわれ、国の重要無形民俗文化財にも指定されている相馬野馬追。期間中は、街中を騎馬武者が行列し、甲冑競馬や神旗争奪戦などが行われる。

宮城県

石巻市

豊かな自然とマンガキャラクターが迎えてくれる街・石巻

石巻市は宮城県の東部に位置し、人口約は15万人で、仙台市に次ぎ県内で2番目に人口の多い街。石巻湾に注ぐ旧北上川の河口にあり、三陸海岸の最南端に位置する牡鹿半島や金華山を含む風光明媚なところだ…

HOME >
大船渡 > 震災から1年の3月11日に、3度めのオープン 極上の音楽とコーヒーを楽しめるジャズ喫茶「h.イマジン」

PAGE TOP