「シネマリーン」支配人・櫛桁一則さん
 インタビュー

「シネマリーン」支配人・櫛桁一則さんインタビュー

「三陸の人々に、“映画の力”で笑顔と感動を届けたい」

「マリンコープDORA」の2階フロアにあり、三陸地域唯一の映画館として、地元の人々に広く愛されている「シネマリーン」。震災後は各地を巡回しながら、被災者向けの無料上映会を開催するなど、娯楽の少ない被災地生活に笑顔と感動を提供し続けている。今回は「シネマリーン」の支配人である、櫛桁一則さんにお話をうかがった。

■「シネマリーン」は全国でも珍しい「映画の生協」ということですが、どのような経緯で生まれた施設なのでしょうか?

シネマリーン

ここは1997(平成9)年に開館しましたので今年で17年になりますが、もともと宮古市内には、昭和30年代など、映画の全盛期の頃には7軒の映画館がありまして、みんな気軽に映画を楽しんでいたんですが、時代の流れでどんどん無くなっていってしまいまして、1991(平成3)年には、最後の映画館が無くなりました。でも、映画館が無くなった後でも、映画を楽しみたいという人が集まりまして、市民会館などで自主上映を行なって、何度も成功させてきたんですね。

 

その人たちがずっと活動していく中で、「やっぱり自分達の映画館が欲しい」という気運がどんどん高まってきまして、ここにショッピングセンターが新しくできる、という情報がありまして、「じゃあ、そこに映画館を作ろう」ということになったんです。
それでも、宮古のような人口が少ない地域では、大きな資本の映画館は来ませんので、「ほかに頼むんじゃなくて、自分たちがひとりひとり、お金を出し合って映画館を作ろう」という事になったんです。これが、「映画の生協」と言っている理由ですね。「市民からの出資で作られた映画館」ということです。

■普段はどのような作品を上映されているのでしょうか?

シネマリーン

普通の映画館でかかるような作品もありますし、それ以外のものもやっています。封切りのものもありますし、ちょっと遅れて上映する作品もありますし、古い名作を特集として上映することもあります。
岩手県の沿岸には、映画館と言えばここだけしかありませんから、宮古市内の方に限らず、宮古市近郊の沿岸の方には幅広く来ていただいていますね。大船渡より南になると、北上に行ったほうが近いですから、三陸の北側の地域の方が多いです。

■櫛桁さんご自身は、震災の時どうされていましたか?

私はその日、仕事で盛岡に行っていたので、地震があってすぐに帰ってきました。その時は地震直後だったので、交通規制もかかっていなかったんですね。宮古に帰って来て、私は職場も家も家族も残っていたのですが、津波の被害を受けた人も沢山いて、残っている人と、すべてを失った人の差があまりにも大きくて、呆然としました。しばらくは気軽にその人たちに声をかけることもできなかったですね。

■震災を受けて、映画館にはどのような変化がありましたか?

シネマリーン

宮古市を含め、周辺の沿岸の市町村が壊滅的な被害を受けましたので、「生活するだけで大変なのに、映画になんて来られない」ということで、入場者数は大きく減りました。2年半経った今でも、まだまだ以前ほどには戻っていません。
そんな状況で、映画館に来られる人は限られますから、「来られないのであれば、映画を届けよう」ということで、各地を巡回して無料で上映する、新しいプロジェクトをスタートしました。

この巡回上映は、岩手県の沿岸市町村、北は野田から南は陸前高田までの計10市町村で行なっていまして、今まで200回以上の上映を行ないました。主には学校や公民館でやっていますが、仮設住宅の集会場などでもやっていますね。「被災者の皆さんに、もう一度映画館に足を運んでいくきっかけを作りたい」という趣旨のものですので、すべて無料でやっています。多い月だと月に20回ぐらいは上映会をしていますね。

 

実は無料で上映できているのは、「シネマエール東北」というプロジェクトのおかげでして、そちらでさまざまな助成金や補助金をいただいて、上映の経費を補填してもらっているんです。映画会社さんからも、出張上映の場合は無償で作品を提供してもらえますし、そのほかにも、ボランティアさんの協力を得て活動しているという感じです。

■巡回上映ではどのような作品を?

夏休みなどは平日にも子どももいるので、子ども向けの作品もやりますし、休み期間以外の平日になると、年配者が多いですから、そういう人たちに向けた上映になります。昨日も宮古市内での出張上映だったのですが、日曜日だったので、子ども向けに『ドラえもん』、大人向けに『北の零年』を2本上映しました。この時は、小学校の中の教室を借りて行ないました。

■実際に出張上映に来られた方の感想はいかがですか?

シネマリーン

宮古ですとそうでもないですが、宮古から離れた遠くのほうに行きますと、「何十年ぶりに映画を観ました」というお年寄りの方が多いですね。もともと、お年寄りの方々というのは一番映画を観た世代なんですが、なかなか映画館には行けませんし、「こうやって来てもらって、久しぶりに映画を観た」ということを言われたりします。もちろん、子どもたちも喜んでくれています。

■今後の展望、方向性についてお聞かせください。

シネマリーン

仮設住まいというのは、これからもまだまだ続くんですね。ですから、そういうものがあるうちは、まだ出張上映の活動は続けていきたいと思います。

震災によって、地域のコミュニティは分断されてしまいました。そして仮設住宅というのは、基本的に全然知らない人たちが集まって、新しいコミュニティを作ろうとしている場所なんです。そこに出向いて映画を上映するということは、人が集まって、みんなで同じ空間を共有することになりますから、「交流のきっかけ」を提供することにもつながると思っています。

 

昔だったら、地域のお祭りによって「みんなが一つになれる場所」が作られていたんですけれど、今はそういうものも無くなってしまいました。「映画」がどれぐらいその力になれるかは分からないですが、「みんなが集まって一緒に楽しめるもの」という意味では、映画は素晴らしいものだと思っていますから、これから仮設が無くなっていっても、「コミュニティ再生」という面から、関わっていければと思っています。

■被災地の一員として、全国の方に期待することは何ですか?

シネマリーン

ご存知の通り、今はボランティアさんのニーズも多くないですし、がれきの撤去も無いし、ボランティアをやりたくても仕事が無かったりします。ですからやっぱり、「ここに来てもらう」という事だけで十分だと思うんですね。

「来たくても何が出来るかわからない」という人たちが圧倒的に多いそうなんですけれど、とりあえず来てもらって、街を見てもらって、自然も見てもらって。そういうところを肌で感じてもらうだけで、十分じゃないかなと思います。それで宮古を好きになってくれれば、それは嬉しい事ですね。

 

今回、話を聞いた人

シネマリーン

シネマリーン みやこ映画生活共同組合
支配人・常務理事 櫛桁一則(くしげた・かずのり)さん
所在地:岩手県宮古市小山田2-2-1 マリンコープDORA2F
電話番号:0193-64-5588
ブログ:http://cinemarine.blog45.fc2.com/
「シネマエール東北」について:http://cinema-yell-tohoku.com/

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