「かけあしの会」が運営する被災者支援ショップ
「復興商店」 発起人、菅原則夫さんにインタビュー

“被災地のことを忘れないでいてほしい”
支援の輪を広げる「復興商店」

 

津波の被害を受けた三陸地域でも、比較的北部にあたる宮古市。この街もほかの街と同様、大きな被害を受けたが、東京からの距離が離れていることもあって、支援の手が届きにくいという現状がある。そんな中で、「地元の自分達が頑張らなければ」と活動している、地元有志によるボランティア組織が「かけあしの会」だ。
「かけあしの会」を主宰しているのは、宮古市民の“台所”のひとつである「コープ宮古店」の店長の菅原則夫さん。震災後間もなくして活動を始め、初期は被災者のきめ細かな支援を、現在は、被災者への就労機会の提供や、全国のコープへの人脈を生かした、地元産品の販売促進を中心に尽力している。
その活動の一つが、「いわて生協マリンコープDORA」、つまり菅原さんが店長を務めるお店の一角にある「復興商店」である。今回はこちらの店内で、菅原さんにお話を聞くことができた。

■「復興商店」は、いつからあるものなのでしょうか?

ここは去年(2012年)の6月1日にオープンしたものでして、復興してきた業者さんとか、仮設にいる方の生きがい作り、生業(なりわい)作りの支援をしようということで始めました。宮古市だけではなくて、被災12市町村の商品を扱う売り場になっています。
実は私、生協の店長をやりながら、「かけあしの会」の代表もやっているんです。この団体は仮設住宅にいる方々に“作業”を提供しようというプロジェクトでして、毎月、新しい商品を発売して、売り出したりしております。

「かけあしの会」は震災の年の7月28日に立ち上げた団体で、NPOでもNGOでもなくて、権利能力なき社団っていうか、そういうものを付けられない団体です。利益も出せない、儲けられないという、本当につらい団体なんですけれど(笑)。「復興にはスピードが必要」ということで、こう名付けました。
以前は店の売り場の一角を使っていただけだったんですが、店内のこの一角がちょうど空いていた時に、ここの理事長にお願いしたら、理事長が「一部と言わないで全部使っていいから、被災者の皆さんの支援に繋がるように」ということで、これだけの場所を確保することができたんです。

■コープの店長さんがなぜこのような活動をされているのでしょうか?

復興商店

この建物がある場所は、もともと「6メートルの津波で冠水する」と言われていた地域で、当然あの津波であれば冠水したはずなんですが、たまたま津波が反対側に向かったので、被災が無かったんです。
でも次の日からは、開店前から毎日2000人くらいが並ぶ状態で、それが20日くらいずっと続きました。みなさん長靴で入るから店内も真っ白になって、商品はほとんど無くなって。それでも、全国の生協から支援があって、何とかやっていました。

でも、夏ぐらいになると、被災者の中から自殺するような人も出てきたんですね。「起きたことに対応する」というのは誰でも出来ることなんです。たとえば私達の生協でも、全国の皆さんからの支援で頂いた喪服5000着以上を、大船渡から久慈まで、配って歩いたこともありました。
それも支援のひとつですけれども、でも、何一つ「先回り」して出来たことが無かったんです。それが一番無念でした。そういった思いもあって、「かけあしの会」という新しい組織を、地域の組合員さんや、知り合いの社長さんなどと、5人で立ち上げました。

震災の記憶というのはだんだんと薄れてきます。生協関係は全国にありますから、神戸や新潟の地震の時にも、お互いに支援を行なったんですが、3年目以降が(支援への関心が薄らいで)本当に大変でした。そういう経験もあって、「この震災も3年目以降が本当に大変になる」ということは、最初の頃から思っていました。</>先日も、名古屋の大型店の店頭、1日で10万人も来るという場所に立たせてもらいましたけれど、実際に商品を買ってくださったのは0.5%くらいなんです。だからこそ、自分達の手で、いろんなネットワークを使って、発信していくのが大事だと思うんですね。

■「復興商店」ではどんな商品を扱っているのでしょうか?

シネマリーン

商品としては、主には被災企業の水産加工品、仮設住宅や授産施設の皆さんが作った商品などを置いております。今は50~60団体くらいでしょうか。
メーカーさんと授産施設さんは利益をもらっていますが、被災者の方の場合は原価売価という場合もあります。仮設の方にお願いしている、新聞紙を使った商品などは、こちらで材料まで用意して、発注して、全部買取りするという方針でやっています。価格についても、高くなってしまうと結局売れなくなってしまいますから、できるだけ安く設定しまして、少しでも多く売れるように心がけています。

■ほかの三陸地域の生協にも、同様の売り場はあるのでしょうか?

復興商店

いえ、ここまで大きいのはうちの店だけです。ほかの生協でも数ヶ月に1回、テーブル2つほどのスペースで扱っていただいていたりはしますが、これだけの規模で常設しているのはうちだけです。今後もしばらくの間は、このスペースを維持していきたいと思っています。
“場所”があることによって来ていただける、ということもありますので、正直なところ赤字の時も多いのですけれど、情報発信という意味も込めております。遠くから支援の方が来ていただいた日には、売り上げが10万、20万になる日もありますので、そういった機会が増えてくれるといいですね。

■オリジナル商品、人気商品について教えてください。

復興商店

今は40数個ほどのオリジナル商品(「かけあしの会」が企画し、製造を委託した商品)がありまして、いまの一番の売れ筋はこの「塩サイダー」(200円)でしょうか。宮古の塩を使っていて、なかなか美味しいんですよ。
あとは、「宮古の塩ストラップ」も初期からのヒット商品です。これは実際に塩の入れ物になっていて、食べられますよ。小さな瓶の中には、被災者のおばあちゃんたちがひとつひとつストローで掬って、3グラムずつ入れています。

あとは、いまは品薄になっているんですが、「あわびの貝ランプ」もお薦めですね。NHKで紹介されたりもしたんですよ。でもこれは作るのが大変で、1日に1個か2個しか作れないんです。穴が空くともう終わりなんですよ。作ってくれているのは仮設のじいちゃんばあちゃんなんですけど、作業するってことは、仮設にいるよりも大変だし、疲れるんですよ。でも皆さん、「疲れるとごはんがおいしくなるし、しっかり眠れる」って言ってくれていますし、出た利益はみんなで割って還元して、喜んでいただいています。

■こうして作った商品の売り上げは、直接被災者に届いて、復興支援につながっているのですね。

復興商店

そうですね。自分達は生協のつながりもあるので、全国の生協の皆さんから利用してもらえて、それが特に強みになっていますね。小さな被災メーカーさんや作業所さんだと、販売経路を持っていないものですから、利益を上げるのは厳しいところもあるんです。ですから自分達は、全国各地の生協に出向いても行って、品物も実際に持っていって、現地で販売したりもしています。
今年も11月までほぼ毎週末、店を投げ出して行っていますよ(笑)。この間は島根にも行きましたし、愛媛にも行きました。全部車に商品を積んで、車で行っています。現地はでは2時間とか、ぜいぜい4~5時間の販売なんですけれど。
これは確かにとても大変な事なんですけれど、こうして全国に出向いて行くと、その後にまた“つながり”が残るので、後になって「支援したい」という人たちが出てくれるんですね。そうやって少しずつ「支援の輪を広げる」という活動もしています。

会の活動として主なものは「新商品の開発」と「雇用の創出」なんですが、たとえば新製品を作ることによって、シール貼りのような作業を新しく皆さんに提供できるわけですね。ですから、毎月いろんなものを発売しながら、それを全国の生協の皆さんなどにお願いして販売してもらって、自分達もイベントに行って販売して、被災者の支援につなげるという活動を、震災後からずっと続けています。

■そんなに大変なことを、2年以上続けているモチベーションは何でしょうか。

復興商店

宮古市は被災地の中でも東京から一番遠いんです。何やるにしても送料がかかりますし、輸送にも運賃がかかりますし、もちろん来ていただくのも大変です。で、それを突破するには「自分たちが行動する」しか無いんです。今まで支援していただいた恩返しするためには、また、被災地を忘れられないようにするには、「活動」しか無いんです。
だから本当に、毎週毎週大変なんですが、いろんな所に行けば、その分だけ「嬉しさ」をもらって帰ってきますから、肉体的な辛さよりも、嬉しさのほうが大きいです。それが原動力ですね。
あと、この活動をやっていて不思議に思うのは、誰かのためにやっていると、必要なときに必要な人が現れたり、お金がない時には、ちゃんとお金が回ってきたりするんですね。何の根拠もないんですけれどね。ありがたいことです。

■被災地に関心を寄せる、全国の皆さんにメッセージをお願いします。

復興商店

震災から3年目に入って、前までは「お涙頂戴」で商品が売れていた部分がありますけれど、これからは「本当にいいもの」を作っていかないと売れません。私たちも、「これからが勝負」だと思っていますし、今まで宮古に心を寄せてくださった全国の皆さんに、今度は私たちから恩返しをしていく番だと思っています。
全国の方には、まず、こちらに足を運んでもらうだけでも私たちは元気になりますし、経済効果も出ますので、一度来て、見ていただきたいですね。あとは、これから先が本当に大変な時期になってくると思いますから、「被災地のことを忘れないでいてほしい」というのが、月並みな言葉ですけれども、一番だと思っています。

今回、話を聞いた人

復興商店

かけあしの会代表・「マリンコープDORA」
統括店長 菅原則夫さん
復興商店
所在地:宮古市小山田2-2-1(マリンコープDORA 1F)
営業時間:10:00~17:00
 
マリンコープDORA
所在地:宮古市小山田2-2-1
営業時間:10:00~21:00
電話番号:0193-63-3131
URL:http://www.iwate.coop/shop/shoplist/store.php?shop=183

かけあしの会
ブログ:http://blogs.yahoo.co.jp/kakeashinokai
通信販売:http://www.kakeashinokai.fhd.jp/myshop/

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